例文集をどう使うべきなのか(あるいは電気羊はiOSの夢を見るか)その2

ちわっす,有嶋です。

前回のエントリでは「例文集はどのようにして作られているのか。」を書きましたが,その続編です。
arishima.hatenadiary.jp

例文集をどのように使うべきなのか。

例文集の役割は2つあると思います。一つは文法や構文を覚えるということです。でも,ちょっと待って(ちょっと待っておに..a@cx!s)! 文法や構文とは何でしょうか。

Swanさんの例文に関する考え

例文をchunkとして考えると,みんな大好きMichael Swanさんの秀逸なコラムが頭をよぎります。

http://www.mikeswan.co.uk/elt-applied-linguistics/chunks-in-the-classroom.htm

この文章の中でSwanさんは,定型表現を覚えることのメリットを4つあげます。

  1. 処理時間の短縮:I will let you know laterなどという決まり文句を知っていれば,let 人 原型とか未来だからwillとか考えなくても済む。
  2. 多大な労力なしに文法を学べる:たくさんの表現を知っていればそれから帰納的に文法を学べます。
  3. 多大な労力なしに文法を生成できる:たくさんの表現を知っていれば,少し形を変えて並べるだけで言いたいことを伝えることが可能。
  4. Native speakerに近づくことができる:母国語話者のように話すには,定型表現が必要です。

しかし,このメリットに対して,SwanさんはHOW GOOD ARE THESE REASONS? という項目で以下のように述べています。
・覚えたら便利だけど,覚えるのに非常に時間がかかる。その時間分の価値はあるのか?
・自分で帰納的に文法を発見するには,教室でL2として学ぶ場合は英文量が少なすぎる。
・定型表現は確かに非常に多いが,残りの部分(有嶋注:文法のコアかな?)は抽象的すぎて多少の操作では表現できない。
・NSのように話せるようにならないと本当にいけないの?

というわけで,意識昂揚タスクを行ったり,注意を払ったりすることができるような方略を携えたりと思うのですが,結局は「やらないといけないことに対して,やるだけのことをやって,それで満足するしかないね」とSwanさんは述べてます。まあ,そうだよね。

Form/Meaning/Useの考えからは?

さらにForm/Meaning/Useの3つのdimensionsを考えると,例文集はどうしてもform-meaningだけをついつい追ってしまい,USEを追わないというところがあるので,そこが批判されるわけです。簡単に言うと「覚えたはいいけど,いつその文法や構文を使えばいいか分からないから,使えないよ!」というわけです。

じゃあ,いったいどうするか

で,600選に話が戻るわけですが,上のSwanさんの考えを借りると,時間をかけずにどうやって覚えまた活用し,そしてForm/Meaning/Useの点から考えると,どう使うべきか知ることが大事になります。

(a) 時間をできるだけ圧縮して覚える

「ただ覚えなさい」というのは英語教師でなくても言えます。だから「覚えなさい」だけで済ますのではなくて,どうすべきか教えてあげるべきです(といいながらも僕も結構「早く覚えなさい」と言ってますが・・・(^^;)。time-consumingな覚えることをできるだけ楽しくやろう!

OWP: "Oral First, Written Second" Principle

覚える系では,絶対に最初はOralで行くべきです。単純なことですが,1回書く間に3〜5回は言うことができます。だから口頭でやればその分,処理量が多くなります。「言ってから,書く。」大事ですよね。技能統合も大事だしな,とかいろいろ考えると,次のようなメソッドが役に立つとおもわれます。
(a) 音読5回競争。同じ英文を5回読んで,どっちが早く言えるか競争する。競争ができないときには、Pen reading(音読を数回した後に、英文の上にペンを縦に2、3本置いて読む)。
(b) Shadowing/over lapping/read and lookup/parapara(表に印刷したのを裏に書く)
(c) dictation/delayed dictation(例文を教師が言った後,またはCD等で音声を聞いた後、5秒程度待ってから書かせる)
(d) dictogloss
こんなもんでしょうか。授業中にそんなに時間取れへんし!と思っても,定着のことを考えたらこれくらいしなくてはダメかも,と思います。あと進学校だと短期記憶に留めるのは得意な場合があるので,覚える時間を取ってあげて,短期記憶で覚えきれない量をテストで一遍に出すというのも1つの手ですね。

あとは応用問題を作るというのもあります。同じような文法・構文を使いそうな日本語文を作って書かせるというものですね。

(b) 使う機会を与える

「いつ使うかわからない」という批判があったら,使う機会を与えてあげれば良いと思います(なんと単純な答えだ・・・)。しかし「なかなかいい本がなくて」という声も聞きます。そうですよね。僕の個人的な回答は次の2点です。

side by sideを使う

それについては,個人的にはSide by sideが結構使いやすいと思います。この本なら実際に使う情景が結構簡単に目に浮かびます。これ結構いいですよ! ただもっと安ければいいんですけどね・・・。

https://www.pearson.co.jp/catalog/sample_download.php?id=2430&purpose=viewpdf

自由英作文などで使わせる。

生徒に何か英作文をさせるときに,600選の英文をほぼそのまま「英借文」して使ってごらん,というのはたまにやります(あくまでも「たまに」ですが)。

とりあえずこの2つを組み合わせてやるというのはどうでしょうか? 

まあ,今日はこんなところです。
さりゅ!