語彙の定着について考える

(下記の文章は割と前に書いた文章に加筆しました。元ネタはhttps://ciee50.jp/toefl/webmagazine/takers-seminar/1906/
※加筆しました(Oct 24)。

1.覚えたい語句は何回処理すべき?

ライフハッカーを読んでいたら、次の文章に目が止まりました。
「ハーバード教育大学院のNonie Lesaux教授によれば、子どもがある言葉とその意味を理解するには、その言葉を13~15回、タイミングと文脈を変えて見聞きする必要があるそうです」
子どもの語彙力を高める方法|反復と文脈を意識しよう | ライフハッカー[日本版]


で、ほんとかなーと思い、原典を探す旅に出ました(ライフハッカーを出典としてもいいけど、念のため。ライフハッカーは好きだけど)。

まずNonie Lesaux教授と書いてあるのだから、その名前とexposure 13 15と入れてぐぐります。Hitされたのを見ましたが、あまり効果なし。で、ちまちまと色々とクリックし、最終的に次のpdfにたどり着きました。
https://www2.ed.gov/about/inits/ed/lep-partnership/interventions.pdf?fbclid=IwAR3w_8rMTEppj2ukh0lfGqXLmachSJPjd8z1ZDTv0oce6Hmccd2d-2TPi5A


んで、20ページに次の文章を発見です。

it is the academic language of middle and high school classrooms and texts that prove most difficult for ELLs and in spite of the fact that ELLs—and their classmates—need between 12 and 14 exposures to a word and its meaning, across multiple contexts (different texts, classroom discussions, writing activities), in order to gain deep understanding of a word.

・・・12から14回と書いてある。あらーという感じですね。以前もWorld Economic Forumの間違いを指摘しましたが、孫引き(誰かが書いたことを読んで、また他の記事が書かれている場合)によく起こっているようです。

閑話休題

で、ポイントは授業中に12-14回出会わせる方法が大事に成ります。評価問題を作成するときに難しい語彙について、「一回教えましたよ(だから、大丈夫)」「教科書に出てきました(ので大丈夫)」というコメントには違和感を覚えていて、一回教えたから覚えているというのは、幻想に過ぎないと僕は感じています。そんな楽な話があったら、警察はいらないですよね。

ではどのようにして生徒に10数回その語句を処理させるか。いくつか考えてみます。

2.語彙の選択

まずはどの語彙を覚えさせるか考える必要があります。認知語彙と使用語彙にまずは分けるといいですよね。このとき、English Profileのサイトが使えます。このサイトでは、CEFRレベルを分けることができます。基本的には、B1までだとできれば使用語彙に、それ以上の場合は認知語彙に、C1を超えたら注釈をつけてあげようという感じです。注釈をあげる語句については、授業だったら、先に意味を教えてあげる語彙です。単語を辞書で引くべき語句は認知語彙や使用語彙に限定してもいいかもしれませんね。なお、CEFRでレベルが高いとされていても、日本の入試などの文脈では割と見るよねということもあるので、最後は教員のさじ加減となると思います(なお、CEFRタグ付けはデフォルトでは、writingになっているので、readingの場合は、本家Text inspectorで確認した方がいいのではないかと高知県の松田先生より指摘をいただきました。)
arishima.hatenadiary.jp


3.認知語彙

認知語彙を増やすのに適した活動は? 普段やっているのは下の活動です。

  • Matching game:語句とその意味を左右に書いて、線をひいてマッチングさせる活動。
  • Word Hunt:英語で定義を与えて、その語句を教科書の本文から探して下線を引かせるか、単語を書かせる活動。
  • Cloze問題:本文に空所を開けて、その空所に何が入るか選択肢から選ぶ活動。
4.表出語彙

では表出語彙を増やすのに適した活動は? いくつかあげてみます。

  • Quick Writing:となりの人と何回その単語をかけるか競争する。割と生徒ははまる。
  • Cloze問題:本文に空所を開けて、その空所に何が入るか考えながら音読/Shadowingする。音読の場合も時間制限を与える。
  • 置換モード:静哲人先生の「大技・小技」(https://amzn.to/2pJWJLC)にある活動。英文に日本語訳を組み込み、音読させる。
  • 図表モード:教科書本文を図表(グラフィックオーガナイザー)で表して、それで内容を英語で説明させるが、使うべき語彙を図表に書き込む。で、その語彙を表出語彙にする。生徒の話す内容は、先生がする手本のコピーで構わない。練習するとだんだんと自分でもできるようになっていく。
5.プロジェクト型もいい。

とはいっても、上はまだ守破離の「守」。本当に英語を使うには、それではダメで、生徒がなんども話したり書いたりする仕組みを取り入れた方が学習効果が高いのではないかと考えます。どのような活動があるでしょうか。

  • ポスター発表:教科書と同じ内容の他のことでポスター発表させる。使うべき語彙を指定すると早いが、例えばCarbon dioxideやemitなどは環境の話では結構出てくるので、生徒は自然とその語彙を使ったり、聞いたりする。
  • 即興ディベート:テーマによって語彙が割と決まるので、最初から単語リストを配布しておく。その中に、覚えてほしい語彙を入れる。
  • 多読、多聴:たくさん読んだり聞いたりすると、よく出てくるフレーズなのが腑に落ちるようになってきますよね。詳しくは、書物で!(え?)
6.まとめ

書くのが疲れたのでこれで終わりですが(え?)、語彙学習についてもいろいろとありますね。今日はこんな感じでしょうか。さりゅー!

引用文献は下。この本面白そうなので、ちゃんと読んでみたいです。
Francis, David & Rivera, Mabel & Lesaux, Nonie & Kieffer, Michael & Rivera, Hector. (2006). Research-Based Recommendations for Instruction and Academic Interventions. Practical Guidelines for the Education of English Language Learners. Book 1 of 3. Center on Instruction.