電子辞書か紙辞書か(授業の悩みシリーズ2)

こんにちは。授業の悩みシリーズ第2弾「電子辞書か紙辞書か」です。これもよく聞かれる質問なんですよね。あくまでも個人の見解ですので、ご理解してお読みください。

具体的には、高校向けで「電子辞書と紙辞書のどちらがいいの?」「そもそも辞書ってどう使うんですか?」などにどう答えるかを書いていきます。
内容は

  1. 辞書の使い方について考えよう。
  2. 辞書使用の効果
  3. 辞書をなぜ使うのか

の3本です(またもやサザエさんか!?)。

辞書の使い方について考えよう。

まず辞書の使い方について考えます。まずそもそも辞書を使うかどうか。「辞書って使うでしょ」と先生方は無意識に思いますよね。でも、中学校の教科書では巻末に単語が意味と一緒に載っています。また高校でも単語一覧を配布する場合もあるかもしれません。辞書を買わせても、明示的にしっかりと使い方を示してないケースもあると聞いています。そういう場合は、「ケータイで単語の意味が分かるのだったら、辞書いらなくない?」と生徒は思うかもしれません。

どんな時に生徒は辞書を使いたくなるんですかねー?

おっと採用2年目で元気溌溂なココロ先生! 今回から登場ですね! そうですね、次の2つですかね?

  1. 読んでいる時に意味の知らない単語に出会って、意味を知りたくなった。
  2. 英語で書いている時に、英語でどう言えばいいのか知りたくなった。

簡単に言えば、この2つではないでしょうか。これ、簡単に言うと、英和と和英ですね。ではもうちょっと深く考えていきます。

辞書使用の効果

辞書を引くときに生徒が期待しているのは、単語の意味を知ることです。「意味がわかれば、この文が理解できる」と思うのですね。そしてその先には、「この文が理解できれば、文章全体の意味及び意図が理解できる」との期待があるのではないかと思います(でも残念ながら、意味理解はそんなに簡単なものではないのですが・・・)。

教える立場からもいろいろな期待がありますよね。生徒が辞書を活用する際に先生たちが期待していることは何でしょうか。

なかなか良い質問ですね。これも分析的に考えてみましょう。次のようなことではないでしょうか?

  • 単語の意味を知る。
  • 発音を知る。
  • 単語の品詞を知り、複数の意味を知る。
  • 例文を読み、語の使い方を調べる。
  • 語彙の学習及び定着につながる。

なるほど。この辺り実際どうなんでしょうか?

先生方は、辞書を使った時に意味を知るだけでなく、付随的に調べた単語の学習を深めて、さらに定着につながることを期待していますね。

うーん、生徒は実際にそんなに深く調べてますかね?

どうでしょう。研究結果をみた方が早そうですね。

というわけで、研究結果をみてみたいと思います。次の2つはどうでしょうか。寺嶋(2005)と米崎(2016)です。寺嶋(2005)はちょっと古いですが、辞書を使う時の反応などに2005年と現在で違いがあるとは思えないので、そのまま参考になると思います。

  1. 寺嶋, 健. (2005). 「英語教育における電子辞書事情 : 先行研究を概観して」(クリック) 言語文化研究, 25(1), 55-71.
  2. 米崎, 啓. (2016). 電子辞書と紙辞書の比較研究 : 検索速度と使用方法について(実証研究,第45回中部地区英語教育学会和歌山大会)(クリック). 中部地区英語教育学会紀要, 45, 111-118. https://doi.org/10.20713/celes.45.0_111

寺嶋(2005)は59ページの「電子辞書に関する実証研究の詳細と結果一覧」が参考になりますね。検索速度、適語到達正答率、定着・保持、読解の4点でまとめています。

検索速度で差が出ていますが、適語到達や定着、読解の差はなさそうですね。

そうですね。検索速度は差が出るけど、他は変わらずという結果が多いように見えますね。

米崎(2016)はどうでしょうか。p.117の考察とまとめが参考になりますね。例文検索の頻度に差がなかったりとかいろいろと興味深い結果が出ていますね。電子辞書か、紙辞書かという議論はいまだに出てきますが、Shizuka(2003)(クリック)が述べているとおり、辞書を使う心理的負担感が高くない電子辞書に分があるのかもしれませんね。

結局はどちらでも生徒は主に単語の和訳を確認という感じですか。

大まかにはそうですね。使い方が同じならやはり検索速度と携帯性、ジャンプ機能などが優れた電子辞書の方に人気が出るでしょうね。

じゃ、電子辞書ですね!

うーん、でもそう言い切るのは早いと思うのです。

どういうことですか?

さあ、どういうことでしょうか。さらに考えを深めてみたいと思います。

辞書をなぜ使うのか

電子辞書か、紙辞書かという話題も大事ですが、もっと大事なのは、なぜ辞書を使うべきなのかということだと思います。上の参考文献にも掲載されていますが、使う場面によって活用したい辞書の機能は色々と異なります。例えば読むときには、本文に集中させたいので、辞書を引くのは必要最低限に抑えて欲しいし(辞書に夢中になると話の筋を忘れてしまいますよね)、単語を集中的に学ぶ際には、品詞や発音まで押さえて欲しくなります。こう書くと、結構先生から生徒に求めるレベルは高いですね(^^;。

でも、その前に自戒を含めて書きますが、辞書を引く際に品詞や発音をなぜちゃんと押さえて方がいいのかなど、説明せずにただ生徒に期待している場合も多いのではないでしょうか。センゲの「推論のはしご」(クリック)じゃないですが、勝手に期待して勝手に裏切られて怒っちゃう人も出てくると思うので、ここは大事なポイントかもしれません。

また、Webを使えば、さらに効率的に学ぶこともできますね。そのあたりも含めて、生徒にしっかりと説明すべきではないかと思うのです。

もっと具体的に知りたいです!

そ、そうですよね。じゃ、少しだけ。

ということで、もう少しだけ考えてみます。生徒が知りたいであろう(先生から見れば、説明すべき)項目を挙げてみます。

  1. なぜ品詞を確認した方がいいの?
  2. なぜ発音を確認した方がいいの?
  3. 絶対覚えるべき単語はどれ?
  4. 英英辞典も使うべきってよく聞くけど、どうして?
  5. なぜ例文も確認した方がいいの?
  6. 辞書はどういう使い方をしたら、効率的に勉強できるの?
  7. 辞書と同時に活用した方が良いWebサービスはどんなのがあるの?
  8. インターネット上にもたくさん辞書あるけど、電子辞書や紙辞書って使うべきなの?

これらの項目については、オリエンテーション等で生徒に伝えて、生徒が自分で考えながら辞書や様々なサービスを目的や用途に合わせて使うようになればいいですね。

でも、これ、全部説明できないです・・・。

あらー。今回は時間がなくなってしまったので、また時期をみて尋ねてください。なお、学習指導要領p.134の配慮事項のところに「中学校で身に付けた使い方を基礎として,辞書を効果的に活用できるようにすること」と書いてあるので、これは研鑽を積みたいところでもありますね。

了解です。がんばります!

というわけで、辞書1つにとってもいろいろとあるなあと思う次第でした。現場からは以上です。さりゅ!