教材研究について考える。その2

「教材研究について考える。その1」に続く内容編。この一週間ですこしずつ書き足して、完成させたい。さて、授業フローとして、ガニエの9事象などを盛り込んで、以下のようにまとめてみた。今回は#全GIGAということで、ICTの力も借りてやる流れで書く。 なお、いつも通り、記事がどんどん長くなるので、今回は目標のうち、理解の領域とされるリーディングについて主に書いた。

授業フロー

このフローをもとに考えてみる。英文は前回と同じ、Voice of Americaの記事を扱う前提で考える。

learningenglish.voanews.com

1 授業の目的と目標等を設定する。

1-1 目的と目標

まずは授業の目的を設定する。メインは生徒がサブスクに関する英文の理解と、そしてそれに関連する意見の生成である。

目標は、以下とする。

  • リーディングスキルとリスニングスキルの向上
  • 語彙力の強化
  • ディスカッションを通じたスピーキングスキルの向上
  • 自分の意見を書いて伝えることによるライティングスキルの向上。

これ、リスニングを入れたのは、授業でリーディングはよく扱っても、リスニングを扱わないことが多いのできちんと毎時間入れたいから。そしてスピーキング力の向上もさせたいと思って以上の目標にした。なお、話した内容をさらに書く活動を入れたが、話す場合と書く場合では表現が異なるので、その点についても生徒に注意したいところだ。

1-2 Can-do Statements(以下、CDS)の設定

次に、Can-do Statements(以下、CDS)の設定。「英文を読んでざっくりと概要や要点をつかむことができる」と最初からCDSをぱっと決めてもいいが、具体的に、「そのCDS、授業で扱って、できるかどうかまで評価します?」となったときに、CDSをまず決めて活動→評価の流れを作るのはちょっとめんどくさい。だから順番を逆にして、言語活動をまず決めて、その言語活動で必要となるCDSを決めた方が無理がないと感じる。具体的には、以下の手順だ。

  1. 「生徒は英語を使って、授業で何をするのか」を決める。=言語活動
  2. 「そのとき、英語で何ができればよいか?」を考える。=CDS(思考・判断・表現)
  3. 「必要とされる英語の知識や技能は何か」を考える。=知識・理解

手順どおり、言語活動を決める。以下、ざっくりとした言語活動のイメージ(生徒の現状に合わせて決める)。

  • Reading:与えられたグラフィックオーガナイザーを使って、英文を理解する。
  • Listening:テキストのトピックを扱う会話(教科書とは異なる英文)をきいて、概要把握とディクテーションを行う。
  • Speaking:CLILのHOTSに類する問いについて、グループでディスカッションを行う。
  • Writing:上のディスカッションを受けて、自分の意見を書く。

以上のようなざっくりとした言語活動をイメージする。で、2番目のCDSに落とし込む。

CDSについては「みんなのCan-doサイト」(クリック)を使うとイメージしやすい。みんなのCan-doは日本語教育のサイトだが、参考にしやすいしわかりやすい。

みんなのCan-do

このサイトでは、CEFRやトピックなどでCDSを探せる。適当にポチポチし、何か近いイメージのものがないか探してみる。下のように5つほど見つかった。右側に教材サイトと書いてあるところは、ログインすると教材全体(使うハンドアウトも!)を見ることができる。かなりCLILっぽい教材を見ることができるので、授業でさせたいことが次々に頭に浮かんで良い。

見つかったCDS

これらを参考にCDSを以下のように決める。

  1. [Reading] テキストタイプにあった適切な図表を使って、英文の要点を挙げた上で、概要を説明できる。
  2. [Listening] 英文のトピックに関する会話を聞いて、その概要や要点を理解できる。
  3. [Speaking(interaction)] 英文に関する問いについて、条件に従ってグループでディスカッションを行うことができる。
  4. [Writing] ディスカッションで扱った内容について、条件に従って自分の意見を書いて伝えることができる。

このCDSは割とどの単元でも使えるようにある程度普遍的に書いた。これは、CDSが1つの単元ですぐにできるようになるとは考えていないし、むしろ最初に扱う単元は導入に過ぎない場合もあるからだ。

例えば、「伝えたいことに適した構成を学び、少しずつその構成で書くことに慣れていき、使える表現も少しずつ増やしていく」と学年や学期レベルのざっくりとした目標を決めた場合、1つの単元でCDSが完了する=できるようになるとは考えにくい。さらに「条件に従って」と入れておけば、各単元で微調整ができる(導入、展開、結論という構成で書く→OREOで書くなどと単元が進むにつれて発展しやすくなる)。なお、CDSは、試しに4技能すべてを書いたが、実際には1単元で評価まで行うのは2つぐらいか適切。

以上のことを図解すると、CDSは、1つ1つの単元で固定のものを扱うイメージ(左図)ではなく、複数の単元にまたがっていくというイメージ(右図)となる。これ、結構大事だ。

CDSはどちらかというと右図のイメージ

1-3 言語活動の具体化、CDSの作成(リーディング編)。

やはり具体的な言語活動のイメージは必要である。まずReadingの分野として、一番上の

  1. [Reading] テキストタイプにあった適切な図表を使って、英文の要点を挙げた上で、概要を説明できる。

について言語活動を考えてみる。

最初にしたいのは、英文の論理構造の把握だ。まずは生徒に、なぜ筆者はわざわざ時間をかけて、その文章を書いたのか考えさせたい。どのような目的が英文にあるか、ChatGPTを使い、さっくりとまとめたものが下。これを念頭にさまざまなパターンを考える。

英文の書かれる目的とその例

今回は、当然news articleなので、筆者の目的はto informである。実際、英文はレストランのサブスクについて、成功例と失敗例を示し、サブスクの効果について軽くまとめている。効率的に英文の構造を分析したい場合は下記のようにChatGPTを使うことも考えられる。

1-4 【ICT】英文の論理構成についてChatGPTを使う。

英文の論理構成については、時間がない場合は、ChatGPTに以下のプロンプトを順に入れていき、確認することもできる。

  1. 英文のテキストタイプを詳細に分類してください。
  2. 各テキストタイプではどのような論理構造がよく使われているか、表形式で示してください(ここまでが下準備。この1、2を先にしておくと、出てくる答えがよくなる。
  3. 次の英文は上のテキストタイプのどれに当たるか示し、論理構成を示してください。Step by stepで示してください。

上記のように、一回テキストタイプを分類させ、論理構成をまとめさせてから、英文を確認させるとうまくいく。以下はこの手順によるChatGPTの出力結果(これ、NotionでAIを用いて、一気に出力できるようにしてもいいかもしれない)。

ChatGPT:

この記事の論理構成は以下のようになっています:

序論:レストランが定期購入に参入する背景やトレンドについて説明する。
本文:大手チェーン店から地元の小さなレストランまで、定期購入に参入するレストランの例をいくつか紹介する。
考察:成功例と失敗例を比較し、定期購入がどのようなメリットや課題があるか考察する。
結論:将来的には、定期購入に参入するレストランが増える可能性があることを述べ、その理由について簡単に説明する。

全体的には、現状について詳しく説明し、成功例や失敗例を具体的に挙げ、最後に将来の可能性について言及するという構成になっています。また、個別の例については、価格や提供されるサービス、料理など、具体的な情報を提供しています。

以上、論理構成の分析が終わったら、Graphic Organizer(GO)を準備する。GOについては、ロイロノートが思考ツールとして、その特徴をかなりわかりやすくまとめているので参照できる(クリック)。また、Canvaにgraphic organizerとしてテンプレートがあるので(クリック)、活用してもいい。あと、ここのinfographicsも参考になる(クリック)

1-5 言語活動を詳しく。

今回は、下記のようなGOを活用した言語活動を導入する。もちろん、生徒が自分にあったレベルを選択できるように、もう少し情報を入れたバージョン(例えば、英文に空欄がいくつかあり、生徒が本文を参考にして簡単に完成できるもの)から、白紙レベル(ただの紙)までさまざまな難易度が存在する。生徒のレベルに合わせて、3つぐらいのバージョンを用意したいところだ。

GOの例

このGOの活用により、次のことが期待できる。

  1. テキストの参照:生徒はGOを完成するために、必要な情報は何か、本文を何度も読んで探すことになる。GOを完成するという目的を持った読みになるので、scanning的な活動となる。
  2. このGOを見ながら、テキストをRetellさせることで、生徒は英文の構成について考えることができる。また、GOには最低限の情報のみ載せる(キーワードだけなど)ため、英文を自分で作る必要がある。さらに、論理マーカーとなるdiscourse markerについて学ぶことができる。

この場合、1だけでなく、2についても、筆者はどのような英語を用いているか確認することになる。そのため、何度も英文を参照することになる。

1-6 考えられる他の活動案

テキストを参照する場合、難しい英文の処理ができない場合がある。その場合の対処は以下。

  • Expert groupsを作る。例えば、上のGOの場合、グループ活動をさせている際に、5つのBoxごとの専門家チームを作り、そこでどうしてもわからない英文について、教師が直接手助けするような活動は可能である。この活動中に聞かれる英文は、(1)文章を理解する上でとても大事な英文の1つだが、(2)英文が難しくて、多くの生徒が助けを必要としている、という特徴を持つと考えられるので、Anno Readerを使って構造を視覚化した上で、全員が参照できるように説明を動画で取るなどの工夫ができる。
  • 英文をナンバリングしておく。ナンバリングした上で、生徒が支援を求めている英文をGoogle formsなどで選べば、生徒が説明を聞けるようにする。これにより、どの英文が生徒たちに難しいかわかるようになる。
  • ヒントを教室の4隅に置いておく。これもよく使う手法。教室の4隅に先に難しく感じるであろう英文のヒントをおいておく。生徒の移動により、生徒の英文の理解度を把握できる。

1-7 使う英語表現について考える。

さて、上記の言語活動をするときに必要となる英語表現(言語材料)についても、意識しなければならない。まず語彙・表現については、前回の記事で取り上げたようにさまざまなサイトを使い、理解に必要な語彙(受容語彙)と発表に使う語彙(発信語彙)に分ける。

語彙リストについては、単語・発音・品詞・例文・種類(受容か発信か)の表をChatGPTに作って貰えば早い。例文も発音も全部つけてくれる。

あとは生徒が利用しやすいように、紙とICTで用意すれば良いが、どちらも生徒の係を決めて、作ってもらうことも考慮したい(こちらが上の表を作り、マニュアルに従って、生徒が紙(EXCEL)とICT(Quizzesなど)を作ってくれるようにすれば、自律的に自分達で作れるようになる)。

Readingはこれでおわり。

以上、こんな感じでリーディングに関する準備は一応終わる。本当は、上位カテゴリの検出や、別の英文の準備なども行ったりもするが、あまりに長くなったので、他の技能や評価のところで述べる予定だ。