ちわっす,有嶋です。
前回は新しい600選について記事を書きました。今回はどのように使用すべきかなのか,私見を述べたいと思います。
例文集はどのようにして作られているのか。
600選を選を改訂するに当たって気をつけたのは,文字通りどの程度その文法事項またはchunkが人口に膾炙されているかということです。今回の改訂では我々の英語教師としてのinstinct(これよく見る表現で,覚えてほしいよねー)に加えて,辞書やgoogle先生に非常に助けてもらいました。
例えば,
「コーヒーを飲みながらそのことを話しましょう。Let's talk about it over a cup of coffee.」
という構文があるのですが,talk about it over a cup of coffeeが2回出てきていることが分かったので,変更する必要がありました。で,これがどのように変遷していったかというと,次のようにしました。
(a) 動詞を決める
命令文のLet'sの項目だったので,Google Books corporaやhttp://corpus.byu.edu/coca/で let's [v*] で検索します。すると,COCAやgoogle booksの中でLet'sの共起語のランキングが出てきます。で,確認すると,COCAでは,go, get, talk, see, take, say, startなどが,google booksではgo, get, see, say, look, takeなどが上位に上がってきていることが分かります。(コーパスの使い方は石崎先生のCOCA の使用方法について : アーリーバードの収穫に詳しいです)
(b) seeに決定
以上の結果からseeを使うことにしました。getも候補に上がったので,Let's getの次に来る形容詞を調べるとmarried, busy, readyなどが多いことは確認したのですが,しっくりくる例文が思いつかなかったので,seeにしました。そして他の委員と話し合い,例文は次のように変遷しました。
(案1)「それがうまくいくかどうか見てみましょう。Let’s see if it works.」
(案2)「その計画がうまくいっているかどうかを確認してみましょう。Let’s see whether the method works. 」
(案3)「その計画がうまくいったかどうかを確認してみましょう。 Let's see whether the plan is working. 」
(案4)「その計画がうまくいったかどうかみてみましょう。Let's see whether the plan worked. 」
もちろんこの間にはいろいろと調査や話し合いがあるのですが,最終的には案4で収まっている状況です。
と,このような段階を経るわけです。
しかし,このコーパスを使った検索は面白すぎて(!),例えばmind my Vingとmind me Vingはどちらが多いのかたまに悩みますよね。これもgoogle booksのコーパスで検索しています。mindはmindedやmindsも含まれるようにして検索しました。すると,
mind me Ving 約6500件
mind my Ving 約30000件
という結果が出ますが,しかし,2000年以降で比較すると,mind my Vingが約5000件に対して,mind me Vingは全体の頻度の約半数の3000件ほどとなっています。つまり,2000年以降で比較すると,mind meを使う人が増えていることが分かります。COCAではどうでしょうか? 同じように比較すると,逆転しているのが分かります。
mind me Ving 約140件
mind my Ving 約80件
このような結果が出ると,やはり動詞+me+動名詞という形も例文集に出す必要性もだんだんと出てくるわけです。しかし,この結果は後ろが動名詞だから前の代名詞は所有格でしょ,という説明や教員のinstinctとは「ずれる」ので,例文集に載せると拒否反応が返ってくるだろうなとかいろいろ想像しながら編集作業を進めるわけです(^^;。
まあ,こんな感じで作っているので,1つ1つの英文は結構覚える価値があるものになっていると(少なくとも僕は)信じています。
長くなったので,エントリを分けます。