オンライン授業に移行するときの覚書

コロナウイルスの関係で、これまで対面授業だけしてきた高校でもオンラインで学びを続ける方法を考えないといけないと個人的に感じています。休校のときに見えてきたことを考えながら、いくつかまとめてみたいと思います(なお、これはあくまでも個人的な考えに過ぎないのでご注意下さい)。

このエントリから
オンライン授業のやり方(クリック)
オンライン授業に関するリンク(クリック)
と2つのエントリに分けてますので、そちらもご覧ください。

【4/18 update分】

以下のことをupdateしました。

  1. zoom等を利用した通信量について
  2. 著作権法の変更について
  3. オンライン授業のやり方については別エントリに分けました。

考慮すべき条件など

相手が高校生ということ、さらに学校がこれまで携帯電話の持ち込みや使用を禁止してきた学校もあることを考えて、次のような条件が必要だと考えました。

  1. 環境調査を必ず行う。様々なことを行うにしても、生徒の状況が分からないとうまく対応できません。登校日のアンケート、Classi、 Google form等を使って、生徒の(1)インターネットに常時接続できる機器の有無、あるとしたら何か(ガラケーかsmart phoneかタブレットかPCか)、(2)その機器は自分専用か、親や兄弟と共有か。(3)もし機器がないとしたら、FAXやメールが使えるかどうか(使えなければ電話か郵送しかない)、(4)常時使えるWifiの有無などを聞いて実態を把握しておく必要があります。アンケート例はこちら。
  2. できるだけ「枯れた技術」を使う。「枯れた技術」は安定していて、みんなが使えるメールとか、メッセージとか、結構普段から使っている技術とのことです(枯れた技術 - Enpedia)。新しい技術は、得意な人もいれば、苦手な人もいます。学校全体で導入することを考えると、できるだけみんながこれまで使っているシステムを使う方が良いかもしれません。Zoom, Edmode, Google Classroomも個人的に好きですが、プライバシー上の問題などが報道されている例もあります。比較的新しい技術はできる人にまかせておいて、しばらくしてからみんなが使えるようになればいいねという感じですね。
  3. 通信量を抑えるようにする。動画ではなく、メールやライン、メッセンジャー等の活用をメインにします。高校生の全員がwifiを無制限に使えるわけではありません。高校生も50GB使えるケースもありますが、みんながそうとは限らないので、できるだけ通信量を抑えるよう、工夫した方が良いです。【4/16注記】 ZOOMで1時間授業を行うとだいたい送受信量は200MBみたいです。なので、200MB x 6コマ x 20日と仮にすると、だいたい1ヶ月で24GBぐらいかもしれません(かなりアバウトなので、必ずご自分でご確認ください。詳しくは「オンライン講義の通信量」に述べられています)。
  4. 共通パスワードを設定しておく。様々な文書等を配るとき、動画を配信するときにパスワードが必要になることがあります。学校全体で同じパスワードを使うことを発表しておくといいです(Reiwaとか簡単なものが良いが、自己判断で。)
  5. 環境づくりの際に、全員が参加できる状況になるまで待たないコロナウイルスが出てきて、突然教える状況が変わったので、とりあえずは8割が参加できればという感じで環境を作っていくのがいいと思います。完全なシステムは急にはできません。もちろん条件が揃わず参加できない生徒もいることを常に考慮して(そのうち、パケ制限がかかる生徒も出ることが予想される)、電話や郵送等での対処等のオプションなどを用意して進めれば良さそうです。これまでの経験では、そのうち徐々にいろいろと進み、みんなが参加できるようになっていくと思われます。
  6. 資料はPDFで配布するiPhone等の生徒が多いことを考えると、PDFで公開するのが一番生徒にfriendlyになります。wordとかの文書をそのままダウンロードするのは厳しいと思われます。
  7. 動画は3分から5分。それ以上は通信量が多くなり、生徒も集中できません。1つの教科・科目ならいいですが、全教科で長い動画を毎日発信すると、50GBでも足りなくなると思います。
  8. 生徒はずっとこっちをみていない、集中していないだろうと思っておく(授業ではいちおう聞いてくれますが、家だと他のことをし始めたりします。自分もそうですけど)。動画や課題の配信をしても、生徒は電話があれば電話に出るし、家族から呼ばれれば、そっちに注意が削がれます。家にいれば、それぞれの事情がある。生徒の注意を喚起する方法をちゃんと考える必要があります。
  9. 授業公開であることに注意する。動画や文書を配信する場合も、保護者や兄弟がうしろで見ている可能性も考慮に入れたほうがいいです。言葉遣いなど丁寧に。
  10. 連絡の更新時間を決めておく。連絡等の更新時間が決まってないと、生徒や保護者がいつ連絡を見るべきなのか分からず困ります。例えば、学校全体や学級全体の連絡などは「連絡がある場合は、平日の10:00に行います」と決めていたり、連絡の際に「次は4月○日の午前10:00に更新します」などと予告しておくと無駄なアクセスをしたり、更新されずにイライラしたりするのを防ぐことができます。

まずは規則正しい生活を送るために

個人的にきいたところ、休校になると生徒たちはだいたい8時〜8時半ぐらいに起きるようです。病気に対する免疫や10代のホルモンのことを考えると学習の開始は9時でいいかもしれません(関連記事 「生徒の睡眠時間を確保するため「朝8時以前の始業を禁じる」法案がカリフォルニア州で可決」)。ただ、以前の休校の時に毎日決まった時間に朝礼っぽいことをすることが規則正しい生活をするためには必要だと感じました。

オンライン朝礼の実施
多くの人が指摘しているように、平日は決まった時間にオンライン朝礼をやった方がいいです。方法としては、ZoomやClassiなどで双方向でやる方法、一斉にメールやLineで発信してメールやメッセージ、Google Form等で答えてもらう方法などがあります。健康状態の確認+生徒が返事を書きやすいような、はてなみたいなお題つき質問(「今日は朝ごはん、何食べた?」など)をあげると良いかもしれません。質問の参考例:http://www.roadtogrammar.com/dl/warmers.pdf(英語です)。生徒が互いに答えを見ることができるようにすると割と盛り上がると思います。

授業のやり方(高校の場合を想定)

オンライン授業を行う場合、次のことに気をつけるといいのではないかと思いました。

  1. 課題をPDFなどで公開する。条件2「枯れた技術」を使うことを鑑み、PDFが一番良さそうです。オンライン授業は教科書を使うことが想定されますが、教科書の内容を公開する場合は生徒に対してのみ公開すべきなので、PDFで作成して、パスワードで保護するといいです。具体的に書くと、まずはWordまたはPPTで課題を入れた文書を作成し、それからPDFで保存して配布という感じでしょうか。
  2. 授業は1日4コマ程度から始める。最初から7コマとかすると、教員が追いつかないので、最初は少なめに始めるのが良さそうです。4コマより少なくてもいいと思います。まずは、できる範囲で。うまくいくプロジェクトによくある、「小さく始めて大きくしていく」が鉄則です。
  3. 時間割を決めさせる。学年で1クラスしかなくても、8クラスあっても、学年(またはコース)の時間割は同じにします(どうせオンラインで個々で受けるので、変える必要はない)。週ごとに設定して(月曜日が国数英理社だったら、火曜日は数英理社国とかそんな感じで)リズムを作ってあげると良いでしょう。
  4. 1単位時間ごとの課題は3つは用意する。教科書はみな持っているので、教科書を中心に考えなければできない課題を用意するのがいいですね。R. ガニェの9教授事象を教師および子どもの視点からまとめた下記の図を参照に「学び」を組み立ててみてはどうでしょうか。
    f:id:karishima:20200412084323p:plain
    9教授事象を自身の学びに活かす(稲垣忠編著「教育の方法と技術 主体的・対話的で深い学びをつくるインストラクショナル・デザイン」2019 p.36)
  5. その時間内での締め切りの時間を設定する。締め切りがあると生徒は頑張ります。例えば、授業を火曜日の10時開始と設定したら、課題1は10:15まで、課題2は10:30まで、課題3は10:45までなどと決めておく。生徒は、メールまたはgoogle formなどで答えるようにします。タイムスタンプが付くので、時間内に答えられたかどうかすぐに分かります。遅れたら、ちょっとだけ減点ねーなど、時間内に答えたくなるように刺激を与えるのも良いかもしれません。生徒には、時間になったら解答を配信して、配信後に答えてきたら減点とするとわかりやすいかもしれませんね。
  6. 課題はひとりでやることを必須条件として考えない。言い換えれば、2人組またはグループで答えさせるのも可にするということです。どちらにしても、できないときは生徒は友達に連絡をとってききます(他の先生に聞くこともあるかもしれません)。生徒が常にひとりで課題に向き合うとは限りません。
  7. 課題はいろんなレベルを作っておく「浅いアプローチ」に関連するものだとすぐに答えられるし、「深いアプローチ」に関連するものだと時間がかかる。4:6ぐらいにすると良い気がします(難しい問題ばかりだと生徒も萎える)。例えば、英語だと英文を与えて出す課題はレベルを下記の3つぐらいに分けられます。とっつきやすい問題は答えを生徒がただ交換して(もしかしたら考えずに)提出して終わりとなることもありえますが、「深いアプローチ」になると自分が納得しないとダメだし、理由などを文章にするので、その生徒のオリジナルな答えが求められていることが本人にも分かります。この浅いアプローチと深いアプローチの2つをうまく組み合わせて出すと良さそうです。
  • 「単語リストの空欄を埋めなさい」 割ととっつきやすい(理解、確認)。
  • 「英文のタイトルとして良いものを下の選択肢から1つ選び、なぜそう思ったかその理由も書きなさい」 考える問題(比較、評価、解釈)
  • 「この英文の後でRogersはどのような行動をしたと思われるか」 かなり時間がかかる(仮定、仮説)。
教科書の利用について

【4/16注記】 新しいガイドラインが出ました。
改正著作権法第35条運用指針(令和 2(2020)年度版)
ご確認ください。元記事は下記です。
forum.sartras.or.jp


教科書の内容をそのままオンラインで全員に公開することは著作権上ダメなので、注意する(参考:遠隔授業で教科書利用可能に 改正著作権法、28日施行 (日経、2020/4/10 10:31))。オンラインで公開されても、3/31までと同じように見ることができるのは生徒や同僚のみという状況にする必要が出てきます。3/31までについては、文科省の「新型コロナウイルス感染症対策に伴う学校教育における教科書の円滑な利用について」という文書があり、その中で下記の文言がありました。パスワード処理は必要ですが、パスワードをつけたpdfの中に直接本文をいれておくか、動画の場合はYoutubeなどの動画のリンクをつけ、その中で見せるようにすることが考えられます(Youtubeでは、リンクを知っている人だけみれる設定にします。Vimeoの場合は、パスワード付きで配信)。

当該学校・地区の採択教科書の利用に限り,発行者が権利を有する掲載著作物を利用して作成した授業動画やプリント等を,当該児童生徒に限定して,学校又は教育委員会が自ら責任主体となって行う複製,公衆送信又は配布に対し,特別の配慮として,教科書利用を無償許諾する

※教科書のオンライン公開についてはここを参照:https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/297591
教科書ネット公開可能に 文科省、休校中の特例措置 :日本経済新聞

※4/12に追記しました。

2019年に買って良かった本シリーズ その2

2019年に買って良かった本シリーズその2です。

中田達也さんの「英単語学習の科学」です。主に教員向きだと感じました。Paul Nation氏に師事されただけあって、勉強になります。軽い気持ちで購入したのですが(!)、思わぬ収穫が多かったと感じています。

特に心を惹かれたのは、第2章、第5章、第6章以降、第20章です。以下レビューします。

続きを読む

2019年に買った本でよかったシリーズ

突然、2019年に買った本でこれよかったシリーズ その1。

論理的思考―論説文の読み書きにおいて

これは松井先生のBlogで知ってポチッとしました。2015年の投稿を読んで、今頃という感じですが、やはり良かったです。
松井先生も書かれていますが、「心身共に健康な時に咀嚼するのが良かろう」というぐらいの気持ちで読まないとズタズタにされますが、基本的には、普段学校で生徒を指導しているときに生徒に教えていることや自分で文章を書くときに思っていることが歯に物着せずで書かれています。

なお、本書は論理性だけでなく、冒頭から「色々言ってもどうせ分からないから、まずやらせて悪いところを直す」的なことが書かれており、実践的指導者としては肯くところも多々ありました。具体例を挙げると、面接練習などで、生徒に「もっと感情を強く言って」などと抽象的に言うケースをよく見ますが、そういっても生徒には伝わりません。私自身はそういう抽象的な言葉をできるだけ避けて、「ぜひ〜したい」「心から思います」など、「ぜひ」「心から」等の副詞をつけ、その副詞を少し大きめに声を出すように言い、それが自然とできるまで指導しています。

作文についても、普段から疑問に思っているところが、確かにそうだ!的な部分があり、参考になります。

論理的観点を考える本シリーズとしては、三森ゆりか氏の下記の本もまたオススメです。
論理的に考える力を引き出す―親子でできるコミュニケーション・スキルのトレーニング

何度も読まないとなかなか生徒に伝える教師としての「論理性」は身につきませんが、ディベートについて指導するときなどに具体的にどのようすれば良いかという実践例「問答ゲーム」が詳しく載っており、共通テストの英語で出題が検討されている「事実と意見の違い」の指導例など参考になります。ディベートをこれから勉強したい、指導したいという人にもいいのではないでしょうか。まあ、この本にも来賓の祝辞など「5WiH」のスピーチについて、小学生が批判的に批評していた例も載っており、辛辣なダメ出しが優しい言葉で書いてあります(^^;。

この本から学び、個人的に普段から言っているのは、「〜とか」「〜など」と生徒が言ったときには、「〜とかっていうことは他は何?」と言ったり、「先生、プリント!」と言われても「プリントがどうしたの?」などと聞き返していますが、よく考えたら生徒にとってはうるさいオヤジにしかなってないかも知れんと思ってはいます(自覚あり)。

まあ、今日はそんなところです。さりゅー。

情報化の波と教育

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。下記はEdTech x English EducationというFacebookのグループに投稿した内容のコピーです。もしお時間があれば、お読みください。

さて、EdTech関連の話ですが、下記は知り合いの小坂先生から教えていただいたサイトです。250ページある文書を9000字でまとめてくださっていますが、理解するのに時間がかかりそうです。少しずつ読んでいき、正月休み中にすべて目を通したいと思います。


blog.ict-in-education.jp


また、昨年12月はPISAの読解力が下がった理由の1つに「日本の生徒がコンピューターを使った解答の仕方に不慣れな点」などが挙げられた記事も多かった印象がありますが(https://www.kyoiku-press.com/post-210466/ )、それに対しては、まずデータえっせいの2020年の比較記事。そしてさらに下の「学習者も常時使う文具へ」を読んでどのように今後教育を進めるべきか考える必要があります。


tmaita77.blogspot.com


gakko.site


勤務校でも、生徒が個人所有PCを持ち込んでいる状況はよく見ますが、校内LANには当然つなげず、Wordでレポート形式にまとめたり、発表のためのプレゼン作成に使用することが多いです。一番上の文書中に出てくる「情報活用能力の体系表(例)」では、思考力・判断力・表現力に関するBの項目を行なっていることが多いかなという感じです。


情報活用能力の体系表(例)


今年からまた環境がどんどん変わっていきそうですが、まずは理解からでしょうか。それではまたよろしくお願いいたします。

ダミーか錯乱肢か。

テストの錯乱肢は「3つでいい」と何度も会議で発言していますが、本意が分かってもらえてないかもなーと感じているので、revisitです。

個人的に大きな衝撃を受けた発表からすでに15年ほどたっていると思いますが、静先生が学会で発表されています。
2006_LT(final).pdf

テストの選択肢は4つ必要なく、3つでいいという論文です。日本語でも書かれていますので、長くなりますが、引用します。

それでは錯乱肢はいくつ必要であろうか。現在の標準テストではほとんどが、正答1+錯乱肢3の4選択肢形式をとっている。しかし今日までの実証研究の結果をみてみるとほぼすべてが実は正答1+錯乱肢2の3選択肢形式の有効性を示しているのである(Haladyna & Downing 1994など)。見かけ上は4つの選択肢があるように見えてもそのうちの1つはほとんど誰にも選ばれず、実質上は存在しないのと同じということが多いのだ。つまり

●選択肢は3つで十分

なのである。
 「でたらめにやっても33%は当たってしまう」というのがよく聞かれる懸念だが、次の理由でその心配は無用である。

(1)2選択肢でも5選択肢でも、十分な数の問題があれば、能力の低い者の正答数は能力の高い者の正答数より小さくなる。
(2)時間が十分にある状況では、でたらめな選択をする者は非常に少ない。
(3)見かけ上の正答数が高くなるのが不満なら、33%分の得点を全員から減点する、という方法もある。(不要な操作であるが。
出典:056 testmon - Zuke's Home Page

英語論文にもあるとおり、数学的にも、論理的にもしっかりとした錯乱肢を作れば、3つで十分です。あとこれで、錯乱肢に残る問題は、「錯乱肢と呼ぶべきか、ダミーと呼ぶべきか」問題だけですね(^^; ちょっとしたrevisitでした。

今日はこんなところです。さりゅー。

語彙の定着について考える

(下記の文章は割と前に書いた文章に加筆しました。元ネタはhttps://ciee50.jp/toefl/webmagazine/takers-seminar/1906/
※加筆しました(Oct 24)。

1.覚えたい語句は何回処理すべき?

ライフハッカーを読んでいたら、次の文章に目が止まりました。
「ハーバード教育大学院のNonie Lesaux教授によれば、子どもがある言葉とその意味を理解するには、その言葉を13~15回、タイミングと文脈を変えて見聞きする必要があるそうです」
子どもの語彙力を高める方法|反復と文脈を意識しよう | ライフハッカー[日本版]


で、ほんとかなーと思い、原典を探す旅に出ました(ライフハッカーを出典としてもいいけど、念のため。ライフハッカーは好きだけど)。

まずNonie Lesaux教授と書いてあるのだから、その名前とexposure 13 15と入れてぐぐります。Hitされたのを見ましたが、あまり効果なし。で、ちまちまと色々とクリックし、最終的に次のpdfにたどり着きました。
https://www2.ed.gov/about/inits/ed/lep-partnership/interventions.pdf?fbclid=IwAR3w_8rMTEppj2ukh0lfGqXLmachSJPjd8z1ZDTv0oce6Hmccd2d-2TPi5A


んで、20ページに次の文章を発見です。

it is the academic language of middle and high school classrooms and texts that prove most difficult for ELLs and in spite of the fact that ELLs—and their classmates—need between 12 and 14 exposures to a word and its meaning, across multiple contexts (different texts, classroom discussions, writing activities), in order to gain deep understanding of a word.

・・・12から14回と書いてある。あらーという感じですね。以前もWorld Economic Forumの間違いを指摘しましたが、孫引き(誰かが書いたことを読んで、また他の記事が書かれている場合)によく起こっているようです。

閑話休題

で、ポイントは授業中に12-14回出会わせる方法が大事に成ります。評価問題を作成するときに難しい語彙について、「一回教えましたよ(だから、大丈夫)」「教科書に出てきました(ので大丈夫)」というコメントには違和感を覚えていて、一回教えたから覚えているというのは、幻想に過ぎないと僕は感じています。そんな楽な話があったら、警察はいらないですよね。

ではどのようにして生徒に10数回その語句を処理させるか。いくつか考えてみます。

2.語彙の選択

まずはどの語彙を覚えさせるか考える必要があります。認知語彙と使用語彙にまずは分けるといいですよね。このとき、English Profileのサイトが使えます。このサイトでは、CEFRレベルを分けることができます。基本的には、B1までだとできれば使用語彙に、それ以上の場合は認知語彙に、C1を超えたら注釈をつけてあげようという感じです。注釈をあげる語句については、授業だったら、先に意味を教えてあげる語彙です。単語を辞書で引くべき語句は認知語彙や使用語彙に限定してもいいかもしれませんね。なお、CEFRでレベルが高いとされていても、日本の入試などの文脈では割と見るよねということもあるので、最後は教員のさじ加減となると思います(なお、CEFRタグ付けはデフォルトでは、writingになっているので、readingの場合は、本家Text inspectorで確認した方がいいのではないかと高知県の松田先生より指摘をいただきました。)
arishima.hatenadiary.jp


3.認知語彙

認知語彙を増やすのに適した活動は? 普段やっているのは下の活動です。

  • Matching game:語句とその意味を左右に書いて、線をひいてマッチングさせる活動。
  • Word Hunt:英語で定義を与えて、その語句を教科書の本文から探して下線を引かせるか、単語を書かせる活動。
  • Cloze問題:本文に空所を開けて、その空所に何が入るか選択肢から選ぶ活動。
4.表出語彙

では表出語彙を増やすのに適した活動は? いくつかあげてみます。

  • Quick Writing:となりの人と何回その単語をかけるか競争する。割と生徒ははまる。
  • Cloze問題:本文に空所を開けて、その空所に何が入るか考えながら音読/Shadowingする。音読の場合も時間制限を与える。
  • 置換モード:静哲人先生の「大技・小技」(https://amzn.to/2pJWJLC)にある活動。英文に日本語訳を組み込み、音読させる。
  • 図表モード:教科書本文を図表(グラフィックオーガナイザー)で表して、それで内容を英語で説明させるが、使うべき語彙を図表に書き込む。で、その語彙を表出語彙にする。生徒の話す内容は、先生がする手本のコピーで構わない。練習するとだんだんと自分でもできるようになっていく。
5.プロジェクト型もいい。

とはいっても、上はまだ守破離の「守」。本当に英語を使うには、それではダメで、生徒がなんども話したり書いたりする仕組みを取り入れた方が学習効果が高いのではないかと考えます。どのような活動があるでしょうか。

  • ポスター発表:教科書と同じ内容の他のことでポスター発表させる。使うべき語彙を指定すると早いが、例えばCarbon dioxideやemitなどは環境の話では結構出てくるので、生徒は自然とその語彙を使ったり、聞いたりする。
  • 即興ディベート:テーマによって語彙が割と決まるので、最初から単語リストを配布しておく。その中に、覚えてほしい語彙を入れる。
  • 多読、多聴:たくさん読んだり聞いたりすると、よく出てくるフレーズなのが腑に落ちるようになってきますよね。詳しくは、書物で!(え?)
6.まとめ

書くのが疲れたのでこれで終わりですが(え?)、語彙学習についてもいろいろとありますね。今日はこんな感じでしょうか。さりゅー!

引用文献は下。この本面白そうなので、ちゃんと読んでみたいです。
Francis, David & Rivera, Mabel & Lesaux, Nonie & Kieffer, Michael & Rivera, Hector. (2006). Research-Based Recommendations for Instruction and Academic Interventions. Practical Guidelines for the Education of English Language Learners. Book 1 of 3. Center on Instruction.

思考力・判断力・表現力を考える。

「大学入学者選抜改革推進委託事業成果報告会の開催について」という文部科学省のサイトで、「思考力・判断力・表現力」をどう出題するかが検討された状況が発表されています。読んでいくと「思考力・判断力・表現力」の定義をどう考え、評価していこうととしているかということが分かります。

国語

まず国語では北海道大学がまとめていますが、次の表のようにまとめています。縦軸が問題形式で、横軸が知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力に分けられています。「思考力・判断力・表現力」にあたるのは「情報抽出・内容解釈・文章表現・心情理解・主張推測・仮設形成・知識思考・共感説明・思考発展」となっています(が、それぞれが何を指すのかまた確認が必要ですね)。

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国語

この文書では、さらにスライド13でまだ出題されていない範囲が掲載されています。このマトリックスからまだ見たことのない問題が作成可能というわけです。

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出題されていない範囲(国語)



なお、私見ですが、筆者のこれまでの経験では、英語の問題作成において「本文からはっきりと分からないことは出題しても良いか」ということは頻繁に話題にあがっています。国語科の先生と話をすると、「最適なものを選ぶ」問題では出題しているとしています。上記にもありますが、文章を「読んでまとめる」「次の行動を予測する」「心情を理解する」などは本文に書かれていないことが多いので、「推測する」ということを評価する上では、今後は「書いていないが、多くの人はこう考える」ということが正解となっていくのかと考えています。

理数

次に理数分野です。思考力・判断力・表現力に関して直接まとめられたスライドはなかったように感じられたのですが、次のように場面に応じて評価することができるとした選抜方法例を示しています。これを見ると、例えば思考力は主にグループワークで、知識は調査書や研究論文で見ることができるとされています。AO入試や推薦入試(来年から名称が変わりますが)などではこのように総合的に評価されることも可能ということです。これらの力をどの場面で育成していくかということに興味があります。

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理数分野

情報

情報の分野はとてもおもしかったです。「思考力・判断力・表現力」はBuzzwordであると明言し、便宜的定義を作成しています。個人的にはこのように分類して形成するのが好きなので、楽しく読みました。引用するとあまりにスライドが多くなるので、リンクを貼ります。

概要:情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発
定義:思考力・判断力・表現力の評価方法と情報科への適用
作問例:思考力・判断力・表現力を評価する問題作成手順

例えば、表現力を見てみると、次のような文章があります。

(Ex) Expression . (与えられた基準において有用な) 表現を構築/考案/創出する力。
基準としては、次のものが考えられる。
・日本語記述としての適切性(内容が過不足ない、把握しやすい提示順序、適切な接続関係の採用など)。
(以下略)
・出典:情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発

これを英語に応用すると、以下のような問題が作成できます。これであれば、PREP形式に述べることがわかっているかどうか(表現力)について知識を持っているかどうか問うことができます。

以下の2つのグラフについて、A君はデータを引用しながら自らの意見を述べようと考えています。説明がもっとも聞き手に分かりやすくなるように、AからFの英語での説明を並べ替えて、その順番を記号で書きなさい。

また問題作成例も楽しいです。文書から引用します。

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作問例(抽象から具体へ)

これまでも英文に下線がひかれ、あてはまる例を選んで答える問題は出題されていました。このように分類され、どのような思考力を問う問題なのか示されると、より明確にCan-doなどと絡めた出題が可能になります。

まとめ

以上、授業や評価問題の作問についてのヒントがかなりあると感じました。様々な分類はとても参考になります。一度しっかりと各教科の視点や概要をまとめて、どのような発問が可能なのか考えてみたいと思います。なお、なぜこの中に「外国語」がないのかという疑問が浮かびますが、またそれは別の機会に探ってみたいと思います。