思考力・判断力・表現力を考える。

「大学入学者選抜改革推進委託事業成果報告会の開催について」という文部科学省のサイトで、「思考力・判断力・表現力」をどう出題するかが検討された状況が発表されています。読んでいくと「思考力・判断力・表現力」の定義をどう考え、評価していこうととしているかということが分かります。

国語

まず国語では北海道大学がまとめていますが、次の表のようにまとめています。縦軸が問題形式で、横軸が知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力に分けられています。「思考力・判断力・表現力」にあたるのは「情報抽出・内容解釈・文章表現・心情理解・主張推測・仮設形成・知識思考・共感説明・思考発展」となっています(が、それぞれが何を指すのかまた確認が必要ですね)。

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国語

この文書では、さらにスライド13でまだ出題されていない範囲が掲載されています。このマトリックスからまだ見たことのない問題が作成可能というわけです。

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出題されていない範囲(国語)



なお、私見ですが、筆者のこれまでの経験では、英語の問題作成において「本文からはっきりと分からないことは出題しても良いか」ということは頻繁に話題にあがっています。国語科の先生と話をすると、「最適なものを選ぶ」問題では出題しているとしています。上記にもありますが、文章を「読んでまとめる」「次の行動を予測する」「心情を理解する」などは本文に書かれていないことが多いので、「推測する」ということを評価する上では、今後は「書いていないが、多くの人はこう考える」ということが正解となっていくのかと考えています。

理数

次に理数分野です。思考力・判断力・表現力に関して直接まとめられたスライドはなかったように感じられたのですが、次のように場面に応じて評価することができるとした選抜方法例を示しています。これを見ると、例えば思考力は主にグループワークで、知識は調査書や研究論文で見ることができるとされています。AO入試や推薦入試(来年から名称が変わりますが)などではこのように総合的に評価されることも可能ということです。これらの力をどの場面で育成していくかということに興味があります。

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理数分野

情報

情報の分野はとてもおもしかったです。「思考力・判断力・表現力」はBuzzwordであると明言し、便宜的定義を作成しています。個人的にはこのように分類して形成するのが好きなので、楽しく読みました。引用するとあまりにスライドが多くなるので、リンクを貼ります。

概要:情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発
定義:思考力・判断力・表現力の評価方法と情報科への適用
作問例:思考力・判断力・表現力を評価する問題作成手順

例えば、表現力を見てみると、次のような文章があります。

(Ex) Expression . (与えられた基準において有用な) 表現を構築/考案/創出する力。
基準としては、次のものが考えられる。
・日本語記述としての適切性(内容が過不足ない、把握しやすい提示順序、適切な接続関係の採用など)。
(以下略)
・出典:情報学的アプローチによる「情報科」大学入学者選抜における評価手法の研究開発

これを英語に応用すると、以下のような問題が作成できます。これであれば、PREP形式に述べることがわかっているかどうか(表現力)について知識を持っているかどうか問うことができます。

以下の2つのグラフについて、A君はデータを引用しながら自らの意見を述べようと考えています。説明がもっとも聞き手に分かりやすくなるように、AからFの英語での説明を並べ替えて、その順番を記号で書きなさい。

また問題作成例も楽しいです。文書から引用します。

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作問例(抽象から具体へ)

これまでも英文に下線がひかれ、あてはまる例を選んで答える問題は出題されていました。このように分類され、どのような思考力を問う問題なのか示されると、より明確にCan-doなどと絡めた出題が可能になります。

まとめ

以上、授業や評価問題の作問についてのヒントがかなりあると感じました。様々な分類はとても参考になります。一度しっかりと各教科の視点や概要をまとめて、どのような発問が可能なのか考えてみたいと思います。なお、なぜこの中に「外国語」がないのかという疑問が浮かびますが、またそれは別の機会に探ってみたいと思います。