Instructional Designについての本をやっと1回目読み終わりました。時間がかかりましたが、得られるものは多かったので満足です。読んだ本はこちら。
この15章にJiTTこと、Just in Time Teachingについて述べられています。JiTTについては、下のページ2つに説明がありますので、まずはお読みください。
○ #230 ジャストインタイムティーチング : LIFENAVI COACHING
○ 『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.15「第15章 ジャストインタイム指導法のデザイン」 - 教育ICTリサーチ ブログ
JiTTとはずばり言うと?
上のページ読みました。結局は、予習して課題に答えちゃうって感じですか?
そうですね。教科書の〇〇ページを読んで、先生の質問にWebで答えるという感じです。
それ別にあんまり新しい方法じゃないような気もしますね。
おっと相変わらず核心を突きますね! 違いについて説明しましょう。
JiTTと従来の授業の違いは、事前にWebで課題を提出する点と課題が「簡単に調べることができないもので、自分の言葉で答えを書く、最適解や納得解を求めるもの」となっている点です。課題は例えば、高校レベルでは次のようになります。
これから扱うレッスン3はヘレン・ケラーについてです。ヘレン・ケラーは、様々な困難を乗り越えて、自分の道を切り開いていきます。あなたがこれからの人生で困難な状況に陥った際に、ヘレン・ケラーの人生のどのような部分を参考に困難な状況に立ち向かっていきたいと思いますか。教科書を読んで答えても、いま知っていることを基に答えても構いません。英語で説明してください。(これ、高校生対象に単元最初の授業を行う際はもう少し簡単な課題がいいと思いますが、ちょっといい例が思いつきませんでした。すみません)
JiTTといままでの方法との違いは、Webで提出してあるので、どのような答えが多いか、学習者がどのような背景知識を持っているか、何を学ぶべきかが先に分かるという点です(もちろん、課題によりますけど)。授業者は、生徒の回答を基に、背景知識などを先に把握して授業設計ができるという点がこのJiTTの良い点ですね。これ、紙で提出させてもいいんですけど、Webで提出すると集約がしやすい場合も多く、まとめやすいんですよね。紙△、Web○という感じです。つまり、時短ですね。
うーん、それだけですか?
実はそれだけではないのです。
個別最適な学びや協働的な学びにも最適
「令和の日本型学校教育」のキーワードは個別最適な学びと協働的な学びです。詳しくは下をみてください。
今までは、生徒の背景知識や設問に対する答えは、授業でしかわかりませんでした。これは反転授業でも同じです。つまり、従来の授業や反転学習では、授業内容について、先生は今までの経験からこれぐらい分かっているだろうと授業を設計していたわけですね。でも、JiTTであれば、次の図のように、授業で生徒の反応をみて、Feedbackしやすくなります。
上記のように、JiTTではWebで回収できるので、あらかじめ生徒の回答を確認できます。そのため、生徒の理解度によっていろいろと対応できます。例えば、生徒の回答によって、授業内で扱う課題のレベルを分けたり(個別最適な学び)、全体的に分かっていないことを授業のメインとしてペア学習やグループ学習で扱ったり、同じ回答をした生徒をグループになるように組んだり(協働的な学び)とか、いろいろと学びを計画しやすくなるわけですね。まとめると下の図になります(従来の授業の図は、僕の高校時代の予習の際のイメージです(^^)/)。
繰り返しになりますが、ずばりJiTTの良い点は、
○ 生徒のレベルに応じた準備ができる。
○ 生徒のレベルに応じた活動を導入しやすい。
の2点ですね。
JiTTはとても良さげに聞こえますが、問題点はないんですか?
あらー。さすがココロ先生、目の付け所がシャー○ですね。実はあります。
JiTTを行う上での課題
JiTTを行う上での課題としては、以下のことが挙げられます。
- 毎日行われる授業で毎時間行うと生徒も先生も割としんどそう。
- 記述式なので、選択式を組み合わせるなどの工夫が必要。
- 教員は授業設計に時間をこれまで以上に費やしそう。
1つ1つみていきましょう。
毎日行われる授業で毎時間行うと生徒も先生も割としんどそう。
中学校や高校では、授業が連日行われる場合もあります。その全ての授業でJiTTを実施すると、先生も対応するのが割と大変だし、空き時間がなくなる恐れがあります(事前に対応する必要があるので)。
これについては、「単元全体でJiTTを組み入れる」という考え方があります。ただ、これにはもう1つ「本質的な問い」と「永続的な答え」の考えを活用する必要がある(西岡・石井、2017)ので、また別稿で示します。
記述式なので、選択式を組み合わせるなどの工夫が必要。
Webの優れた点は、すぐに答えの収集と集約がしやすいという点です。そのため、選択式で答えを回収すれば、すぐに集計ができるので、どういう誤答が多いか判断しやすく、またそれに応じた授業がしやすいですよね。このJiTTでは、上に書いたように、課題が「簡単に調べることができないもので、自分の言葉で答えを書く、最適解や納得解を求めるもの」となっています。しかし、記述式は集約がしにくいので、集約をするのに時間がかかります。なので、選択式を適宜取り入れて集約がしやすいようにGoogle Formsを使うのと同時に、記述式はmentimeterを使ってワードクラウドを作るなどの方法を取り入れるなど、とにかく工夫が必要です。
教員は授業設計に時間をこれまで以上に費やしそう。
あとこれが1番の課題だと思うのですが、授業前にこれまで以上に準備が必要です。授業デザインをしっかりとできる分、手間が増えます。上のように集約をプログラムやアプリでできる場合には、使う(mentimeter以外にも、例えばKHcoderなども使えるかもしれません)などの工夫を行う必要があります。ただ、授業中はちゃんと設計すればするほど、先生の時間が余ります。例えば、これまで予習のチェックや回収などをしていた時間、さらに生徒の反応を確認してから説明した時間などが減ります。理想では、授業の余った時間を形成的評価に回すことですが、うーん、どうでしょう。やってみないとわかりませんね。
なるほど。やはりインストラクショナルデザイン(ID)の1つと考えられていることもあって、JiTTを導入すると、これまでとは異なる方法で教えるので、授業の流れなどについての考え方も変えていく必要もあると言うことですね。
そうですね。IDの考えを取り入れるとこれまで以上にいろんなことが最適化・精緻化していく部分はあるので、無駄がなくなることもあります。ただ、「授業中の無駄話も結構好き」という生徒もいるので、いろいろとバランスをとっていく必要はあるでしょうね。
ということで、JiTTについてちょっと書いてみました。現在自分では実践できないので、一緒に実践されたい方がいらっしゃったらぜひ教えてください。
では現場からは以上です。さりゅー!