親愛なるtmrowingさんこと、松井先生のセミナーを受講しました。先生のセミナーは、文字指導の初級、中級に続く第3弾です。
今回は、「名詞は四角化で視覚化」 を体系的に実感できる三省堂の「チャンクで積み上げ英作文」と関連の深いセミナーでした。ワニの口といえば、ご存知の方も多いのではないかと思います。受講者として期待しているのは、また新たな「視点」を得ることができるのではないかということでした。長年、先生のブログを愛読して、もう20年は経つのではないでしょうか(最近では、「高校生から松井先生のブログを読んでいて、そして先生(これは私のことです)の名前もたまに見かけていました」という衝撃的な言葉もありました)。そんな割とDeepな(と自分では思っている)読者でも新たな視点は得られるのか?と思われるかもしれません。が、受講してみて、決して裏切られることはなかったというのが正直な感想です。やはり、Twitterやブログの文字上で追いかけていても、御本人の肉声から語られる言葉に勝るものはないと感じました。
さて、現在「共通テストの文字数が増えた。だから速読だ!」などの声が上がることもありますが、速読を練習すれば、読める「目」を有する事が可能なのか、というのが正直な思いです。自分自身は現場を離れ2年程度経ちますが、離れて思うことは、決して速読に取り組んだからといって読む「目」が育つわけではないということです。言葉をいかに大事に捉えて、地道に丁寧に取り組んでいくか、その姿勢が大事だと思います。確かに、受験生にとっては英語は多くある教科の1つです。そのため、効率良い学び方を生徒は求めるかもしれません。しかし、英語を学ぶことにおけるプロとして、しっかりと学び方を教えていくというのは大事なことではないでしょうか。
松井先生の2時間の講義はこのようなことを、改めて感じさせるものでした。私自身が松井先生に最初に感じた感想ーthe teachers’ teacherであり、言葉を選ばずにフランク人的率直さをもって言えば、燻銀的な職人を思わせる方ーというのは、やはり間違いではなかったと思います。
ちょっと話がずれましたが、共通テストの文字数が増えたということは何を意味しているのでしょうか。難しい英文が増えたのでしょうか。いえいえ、総語数におけるB2/C1程度の構文等の割合や文あたりの単語数の割合は変わらないはずです。実際調べてみましたが、今年度の共通テストの第6問Bの本文とR2のセンター形式の第6問の本文を比較すると、下記のようになります。
語数 文 語数/文
共テ 530 34 15.5
セン 569 34 16.7
つまり、あまり変化していません。しかし共通テストはこれが第6問Bなので、当然Aもあります。このようなそれぞれが割と長い文(1文あたり、16語ぐらいあるものは長くないですか?)で構成されている英文を子供達は、共通テストではより多く読むわけです。
さて、英文は基本的には、SVOでできていると考えてみましょう。She drinks coffee.などはSVOです。3語ですよね。SVOCになっても、4語です。ではどうすれば15語程度の英文になるのか。動詞に注目すると熟語!となりますが、look forward toなどを考えても3語、had been -ingでも3語で、動詞を複雑化したわけでもなさそうです。ではどうして長くなったのか、と考えると、名詞句や副詞句、前置詞句や節で英文が長くなっているのではないかと考えられるわけです。
そうして考えると、英文を教える上で、「きちんと名詞句や副詞句、前置詞句をきちんと授業で扱っているか」という問いにぶつかります。そこで凡人である自分などは「はっ」とし、姿勢を正したりするわけです。そして、これは松井先生の先見性ということになると思いますが、その問いの答えとしての、ずっと松井先生が教えられてきたことをまとめて作られた冊子の中身を拝見して、なるほどなるほど!と思いながら講義を受けていくわけなのです。
松井先生からは、もしかしたら怒られるかもしれませんが、ちょっとだけネタばらし(spoiler!)をしてしまうと、私自身は関係詞のところで、心を最も動かされました。関係詞は、当然ながら先行詞を修飾しますが、同じような機能を例えば不定詞も分詞も持っています。では、不定詞や分詞を用いるべき時と、関係詞を用いるべきときの違いを明確に生徒に述べているでしょうか。言い換えれば、関係詞という機能を我々人類は廃棄せずに、何故今もなお継続して活用しているのか、はっきりと述べることができるでしょうか。
私は、生徒にしっかりと名詞修飾の様々な方法を区別しつつ指導を行っていなかったことに対して、頭を叩かれた感がしました。そしてさらに「関係詞を使ってまで表現する意味のある内容を扱っているのか。つまんないこと書かせてないか」という松井先生の言葉に完全にやられました。
みなさんはどうでしょうか。不定詞と関係詞、それぞれでできることとできないことを明確化されていますか。そして内容のあることを書いたり読んだりするよう、生徒と一緒に学んでいるでしょうか。松井先生はどのような文例などを生徒に示し、学びを深めさせるかについて、今回の教材を通じて示されていると思います。
実は松井先生は、毎日惜しげもなく毎朝早くから(おそらく3時や4時ぐらいから)集めてらっしゃるニュースメディアの英文の文例やGloWbe, NOWコーパスをTweetされています。今回の冊子もまた、その結果を基にした英文を提供されています。
なぜそんなに日々の努力の賜物ともいえる、高いレベルの英文を提供することを、松井先生はご自分に求めていらっしゃるのでしょうか。いつかSNS上だったか、松井先生は若い時の自分自身へのメッセージであるという内容を示されていたと思います。きっと先生は若い頃の自分自身に対して、本当の英文、意味のある英語というものを示し、「こんな世界があるんだよ」ということを教え続けてらっしゃるのではないかと思います。
このようにして作成されたものなので、先生が2冊の教材で示しているもの(世界)は、すぐ分かるような易しいものですかと問われると、そうではないと答えざるを得ません。しかし、先生は優しいですかと問われると、そうですよと僕は答えます。
松井先生は、この教材を通して、高校生には、まだ見えない、見えていない地平線を示し、遠くが見えるための方法、つまり英文を読む、書くための方法を、ワニや四角を使って示して下さっていると僕は思うのです。うんうん、うなって考えつつ、諦めずにワニや四角での英文の読みを続けていると、その先にある読解、英作文に至るのです。それは、ぱっとすぐにできる方法ではなく、示したやり方で登っていけばそのうちにちゃんと見える、しかも遠くまで見える、世界の見方や視点を得る方法ですから、易しくはありません。でもそこで扱われる英文の質やその英文から学べることに先生の優しさは見えると思うのです。
そんなことを感じつつ、個人的にまた楽しんだ(!?)2時間でした。なお、この教材、まだ市販はされていません。そのため、学校関係者以外は見ることはできませんが、もし少しでもその片鱗を感じたい方がいらっしゃったら、ぜひ先生のnoteやSNSをフォローされてみてください(この講義を受けられるのが一番早いですが、教材が欲しくなるというアンビバレントな状況になります)。Tweetでは、謎の「現実味のcould」などの言葉に触れることができます(そしてその意味もフォローを毎日続けることで、少しずつわかってきます)。
では今回は、松井先生の講義「第3弾」!を受けてみた、でした(ここまで書いて気づいたのですが、文字の中級編の感想を書くのを失念していますね。あらー)。