perplexity.aiと論文指導

AI関連の技術畑の話なので、半年ぐらいの賞味期限しかない記事だと思うが、とりあえず。

ChatGPTに続き、Perplexity.aiというAIのサービスが出て、俄然twitter関連が騒然としている。下はこのサービスを知る元になったSangminさんのtweet(正確にはこれじゃなかった気もするが、まあ、それはそれとして)

https://twitter.com/gijigae/status/1616305953296756741

個人的には、このサービスによって小論文指導の手順がまた今年は変わると考えている。岐阜のW先生と話していて、Perplexity.aiを活用した指導についての話題となった。Perplexity.aiのリンクは下。ChatGPTに比べて、電話番号の登録等も何もいらないので生徒に勧めやすい。

www.perplexity.ai

Perplexity.aiを小論文指導で使う

令和4年度の東京大学法学部の入試問題で多様性に関する問題が出題された(クリック)

問題を見ると、以下の2点が要求されている。

1 大学はどのような点で学部学生の構成を多様化すべきか。
2 多様性を促進するために、大学はどのような施策を講じることができるか、具体的な施策を示し、その功罪を論ぜよ

自分が指導するとしたら、まずは組織にとってなぜ多様性や包括性が大事かという、その理由の理解から始めるだろう。生徒に予想させ、そして事実を確認させる。その時点で、まずは単純に、生徒にPerplexity.aiに「組織に多様性は大事か」と聞いてみることを勧めることが考えられる。その回答は以下となった(リンク)。
  

ChatGPTの回答結果と異なる点

Perplexity.aiとChatGPTの回答結果が異なるところは、ソースを示してくれるところだ。回答は日本語や英語で示される(が、これは設定によるかもしれない)。ソースも日本語と英語のサイトが示されるが、回答は英語で読めないという生徒には、右クリックして、下のように日本語への翻訳を選べばまあ良い(少し日本語はおかしいこともある。この辺りが英語ができるかできないかで得られる情報量が変わると思う所以である)。

回答の説明を詳細にすることも可能

このAIの回答をより詳細にすることも可能だ。右上にある"View detailed"を押すと内容をさらに詳しく示してくれる。例えば上記の場合では、view detailedを押すと、1番目に示されている組織パフォーマンスについて、マッキンゼーの性の多様性を確保した組織上位25%は業績が15%よく、確保できていない組織は業績の平均値に達しないという内容が示される。なお、それが書かれている電通のサイト(クリック)へのリンクが示されるのは、view detailedを押しても押さなくても変わらないが、先行オーガナイザーがあるかどうかで理解に差が出るのは言うまでもない。
    
この他にも、多様性を確保することで、より活発な議論が生まれやすいこと、そして新しい視点やアイディアが生まれやすいことがソースと共に示されている。今までは、なぜ多様性が必要かということを教師が教えなければならなかったが、Perplexity.aiを活用することで生徒が自分で調べて理解することができる。

2番目の答えを考える

さらに、どのような施策が考えられるかという2番目に訊かれている点についてもperplexity.aiの活用を考えてみる。

実際の指導であれば、まずはブレインストーミングを行ったり、各自でマッピングをさせ考えさせた後でPerplexity.aiに聞くといいかもしれない。そうすれば生徒自分が思いつけなかった視点がより明確化し、どのような視点を取り入れればよいかというメタ的な視点を得ることにもつながり、次の段階へと移行しやすくなる。Perplexity.aiでは、次のような答えを得られた。


答えをちょっと分析

いくつか答えが示されているが、3番目にintroducing diversity management strategies(多様性管理戦略の導入)と書いてある。なじみのない言葉だったので、示されたリンクに飛ぶ。そうすると、企業の多様性の段階を示す「抵抗」「同化」「多様性尊重」「分離」「統合」が示してあり、さらに大学の取り組みについても説明がなされている。これを読むことでかなり理解が深まる。これは、今までのGoogle検索ではなかなか見つけづらく(端的に検索したいことの内容が示されていないことがある)、また新書で読んで考える場合には時間がかかることがより効率的にみつかることになる。もちろん、Webでなく新書で読んだ方がより詳細で、かつ人の手が入っているのでより正確であるという良い点も忘れてはならないが、それでも多くの内容を扱うべきこの1ヶ月では、Perplexity.aiはかなり重宝されるはずだ。

Promptはやはり大事

以上、質問されていた事項については検索できたものの、その背景にあったり関連することについての検索は個人差が出ると考えられる。例えば、「多様化を進めるための組織変革に効果的な手段」「個人について保守的なマインドセットを変えるための手段」などをキーワードにperplexity.aiを使って検索できるかどうかは、最終的には回答の質に関わってくる。ある程度生徒自身が知識をつけて検索したり、また教師が検索するキーワードについてアドバイスをするなどの工夫は必要ではないかと思う。言い換えれば、よりよく生徒が学ぶために、AIにどのように聞くように生徒にアドバイスするかという教員のスキルの充実も大切になってくると思われる。

おわりに

以上ここまで示してきたことは、小論文の対策という文脈だったが、例えばディベートやレポートのトピックについて理解を深めるときにも同じ作業を行い、調べることができる。より多様な視点を得るという意味で、Perplexity.aiでの検索が使えるし、作文については、ChatGPTでの校正作業も可能である。これまでだったら先生に頼る場面であっても、まずは生徒が自分でできるところの意味は大きい。実際の現場での指導としては、2年生のうちにここまでできるように指導を続け、3年生ではみんな当たり前に校正まで行ってから先生に相談だと、先生方の負担もかなり減ると考えられる。長年指導をされた先生方の視点は、なかなか急には得られないことでもあり、負担を減らせるところは減らし、先生方の知見がより多くの生徒に行き渡ることが望ましい。AIを活かしつつ、先生方の知見をどう活かしていくかという視点が必要ではないかと思う。

以上、小論文指導が今後変わってくると思う事例だった。今日はこんなところです。